ある方が亡くなると、その方の遺産相続の手続が開始します。
ですが、一言で相続手続といっても、いったい何をすればいいのか見当もつきません。
親しい方を失ったことの悲しみ、お通夜やお葬式、初七日、遺品の整理などなど、
死後の目まぐるしい日々を送る中で、相続のことまで考えるのは大変ですし、
実際、遺産相続の手続には大きな時間と労力を要するものです。
ここでは、ある方の死後の各種手続、遺産分割協議から遺産の分配の過程、
そして分配後の相続税の申告までの一連の流れを、時系列に沿ってご説明いたします。
おおまかな概要を把握しておくだけでも気持ちの余裕が生まれますし、
相続手続もスムーズになりますので、まだ当分は相続とは無縁そうだという方も
ぜひ一度ご覧いただき、将来の円満相続のための備えとしていただければ幸いです。
(2019.10.3 記事全体を最新の相続法改正に対応した内容に改訂)
1 葬儀後の諸手続
2 相続人の調査
3 相続財産の調査
4 相続手続開始(遺言書がない場合)
5 相続手続開始(遺言書がある場合)
6 遺産の分配(遺言の執行・遺産分割)
7 相続したくないときは…(相続放棄・限定承認)
8 相続税について
9 当事務所へのご依頼
1 葬儀後の諸手続
故人の死後まもなく、お通夜・葬儀の手配をされることになると思います。
お通夜や葬儀に関しては、最近は葬儀業者のほうで進めてくれますので、
おそらくは形式や予算の選択をしていけば、滞りなく完了することでしょう。
しかし、葬儀が終わった後も、やらなければいけない手続がたくさんあります。
まず、故人の死亡届と火葬・埋葬許可の申請をする必要があります。
死亡届は死亡を知った日から7日以内に届け出なければいけません。
火葬許可証は、火葬後にそのまま埋葬許可証となります。
そのほか、故人が印鑑(実印)登録をしていた場合は、
該当の市町村役場に印鑑登録証を返納してください。
また、運転免許証をお持ちでしたら、免許センターへ返納してください。
国民健康保険の加入者には「葬祭費」が支給されます。
金額は市町村ごとに異なりますが、だいたい5〜8万円程度のようです。
申請先は市町村役場の国民健康保険課となります。
健康保険の加入者の場合は、「葬祭費」ではなく「埋葬料」が支給されます。
金額は故人の平均標準報酬月額の1か月分程度です。
こちらは勤務先の健康保険組合か管轄の社会保険事務所(退職済の方)に申請してください。
さらに、故人が年金加入者の場合、遺族年金が受け取れる可能性があります。
申請先は、国民年金加入者は市町村役場、
厚生年金の場合は勤務先か社会保険事務所となります。
請求期限は加入者の死亡から5年以内です。
上記の公的手続に加え、電気・ガス・水道等の公共料金の名義変更、
故人の契約していた各種カード等の解約・停止なども行う必要があります。
これらを一度にすべて済ませるのは困難ですので、
リストを作って少しずつ確実に進めていくのがよいかと思います。
2 相続人の調査
葬儀後のもろもろの手続を終えたら、いよいよ遺産相続のことも考え始めます。
まずは、誰が相続人となるのか、これを確定させる必要があります。
以下、相続順位に沿って、法定相続人の決め方についてお話しします。
まず配偶者がいる場合は、配偶者は必ず相続人の1人となります。
子供がいれば、配偶者と子が相続人となります。
前妻や愛人との間に子がいれば、その子も相続人となります。
子供がいない場合は、配偶者のほかに故人の親が相続人となります。
親もすでに亡くなっている場合は、故人の兄弟が相続人となります。
また、相続人が先に亡くなっていた場合、子がいれば子が代わって相続します(代襲相続)。
さらに、故人の子が故人に先立っていたら、孫がいれば孫が相続することになります。
例:私自身のケースで考えてみると、私は独身で子供もいませんので、
私が死んだらまず両親が、両親が先に亡くなっていたら弟が相続人となります。
弟も私より先に亡くなっていたら、弟に子がいればその子が相続します。
最後に、遺言書で法定相続人以外の人にも遺産をあげる(遺贈する)旨の記述があったら、
その人も法定相続人とともに遺産を相続することになります。
以上が法定相続人の範囲の原則論ですが、
実際の相続のときには、戸籍謄本などの調査が必要になってきます。
と言いますのも、「実は前妻がいた」とか、「隠し子がいた」、
「父親が違う兄弟がいた」といったケースもありうるからです。
こういったことは、えてして故人が家族にも知らせていないことも多いようで、
相続時の調査で初めて知ったということも珍しくありません。
遺産の分配後に新たな相続人が現れた場合、分配そのものが無効になったり
分配の話合いがやりなおしになったりと、大変な不都合を生じますので、
あらかじめきちんと調査しておくのがベストでしょう。
相続人の調査には、故人の戸籍謄本、除籍謄本に加えて、
古い型の戸籍である改製原戸籍が必要になります。
これらを故人の他界から出生までさかのぼってすべて取得して
故人の家族関係に漏れがないかを調査します。
面倒ですが、すべて取得しないと、相続人が本当にほかにいないのかということを
公に証明することができなくなってしまいます。
不動産や預貯金の名義変更にも、故人の出生から死亡までの戸籍等を
求められることがほとんどですので、必ずすべて取得するようにしてください。
3 相続財産の調査
相続人の範囲を確定したら、次に何を相続できるのか、
言い換えれば相続財産の範囲を確定させる必要があります。
相続財産には、お金や不動産のほかにも、思った以上に多くのものが含まれます。
家具、貴金属などの動産、株式などの有価証券、貸金債権などの各種債権、
借地・借家権などの各種権利のほか、原則として故人の一切の権利義務を相続します。
(借金があれば借金も相続します。保証人になっていたらその保証債務も引き継ぎます。)
これらをすべて列挙し、不動産なら路線価や固定資産評価額、自動車なら同程度の
中古車の価格などといったように、逐一評価して財産目録を作成します。
この作業はケースごとに調査方法もすべて異なってきますので、
2の「相続人の調査」以上に複雑で手間がかかる作業となります。
なお、故人の生命保険金や死亡退職金などは、受取人が指定されている場合は
その受取人個人の財産となりますので、ほとんどの場合相続財産に含まれません。
(ただし、みなし相続財産として相続税の課税対象にはなります。)
4 相続手続開始(遺言書がない場合)
相続人と相続財産を確定させたら、いよいよ遺産相続の手続をスタートします。
まず最初にすべきことは、遺言書の有無の確認です。
遺言書があれば、基本的には遺言書の内容に従って相続手続を進めます。
最近は遺言書を残される方も増えてきましたので、慎重に探してみてください。
ご家族の中に、保管場所をお聞きになった方がいらっしゃるかもしれません。
遺言書がない場合は、法定相続人全員の協議による遺産分割か、
法定相続分(※)に基づく遺産分割をすることになります。
一般的には、遺産分割協議をするケースが多く、うまくまとまらない場合や
協議の際の目安として、法定相続分が用いられることが多いようです。
※法定相続分
配偶者と子供がいる場合
→配偶者と子供が相続(配偶者が1/2 子供は残り1/2を人数割)
子供がおらず、親が健在な場合
→配偶者と両親が相続(配偶者が2/3 両親は残り1/3を人数割)
子供がおらず、親も亡くなっている場合
→配偶者と兄弟が相続(配偶者が3/4 兄弟は残り1/4を人数割)
※その他の相続のルール
・非嫡出子(愛人や内縁者との間の子)でも嫡出子(夫婦間の子)と相続分は同等 ※平成25年改正
・相続人が先に亡くなっていた場合、子がいればその子が代わって相続できる(代襲相続)
代襲者が複数いる場合は、その相続分を人数割する
代襲者もすでに亡くなっている場合は、さらにその子(孫)が相続する(再代襲)
兄弟姉妹が相続する場合も代襲相続はあるが、再代襲はできない(相続できるのはおい・めいまで)
・まだ生まれていない胎児がいれば、相続では胎児も相続人に含まれる
・故人の生前に贈与を受けていたら、その分は「特別受益」として相続分から差し引かれる
・故人に特別に貢献(療養看護等)した人には、「寄与分」がプラスされる
※2019.7.1施行(特別の寄与の制度の創設)
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には
相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。
※2019.7.1施行(預貯金の払戻し制度)
預貯金が遺産分割の対象となる場合、各相続人は遺産分割が終わる前でも
一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。
※2019.7.1施行(婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置)
※2020.4.1施行(配偶者居住権)
残された配偶者の保護を目的として創設されました。
●遺産分割協議の進め方
遺産分割協議は、必ず相続人全員でする必要があります。
言いかえますと、1人でも合意しないと分割協議は成立しません。
たとえ親族同士でも、それぞれが独立して家庭を持っていたりすると、
相続人同士の主張がぶつかり合って紛糾することも少なくありません。
「兄貴だけ多い!」「オレにもう少しよこせ!」などといった争いは、
テレビドラマの中だけではなく、どのケースでも大なり小なりは生じるものです。
それを防ぐために、生前に遺言書を書いておくのが好ましいのですが、
突然死などの場合は、遺言書を用意しておく時間がありません。
なお、相続人が未成年の場合は、代理人が代わって分割協議に参加します。
通常は親が代理人となりますが、親も相続人の場合は、代理人になることができません。
(例:父が亡くなって母と未成年の子が残された場合など)
そういった場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。
たいていは相続人ではない親族(おじ・おば等)が代理人となることが多いようです。
●遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議の結果、「家は誰、貯金は誰」といった感じで無事に決まりましたら、
遺産分割協議書を作成して協議の内容を正確にまとめます。
遺産分割協議書は相続人の人数分作成し、相続人全員が署名・実印押印をします。
それに加えて、相続人全員の印鑑証明書も用意します。
これがないと、ほとんどの場合、不動産や預貯金の相続手続を受け付けてもらえませんので、
面倒でも全員分の署名・実印押印・印鑑証明書をセットで揃えてください。
遺産分割協議は相続人が一堂に会して行うのが最も好ましいのですが、
遠方に住んでいる人がいる場合などは、郵送による持ち回りで行うこともあります。
どうしても分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てて
調停や審判で決着することになります。
以下、一般的な遺産分割協議書のサンプルを作成してみました。
具体的な書き方や書式については特に定めはありませんが、
A4の用紙に下記のように作成するのが好ましいでしょう。
サンプルの末尾に作成の際のポイントも記しておきましたので、あわせてご参照ください。
遺産分割協議書
平成29年1月1日、鈴木太郎の死亡により開始した相続につき、共同相続人である
鈴木花子・鈴木一郎・鈴木二郎は、次のとおり相続遺産について遺産分割の協議をした。
1 相続人鈴木花子・鈴木一郎は、次の物件を取得する。
(1) 埼玉県○○市△△町□□丁目◇番
宅地 123.45u
(2) 同所同番地所在
家屋番号 6番7
木造瓦葺2階建居宅1棟
床面積 1階 44.55u 2階 33.44u
2 相続人鈴木二郎は、○○銀行△△支店の被相続人名義の貯金1,000万円を取得する。
3 鈴木家の葬祭は相続人鈴木一郎が承継する。
4 本書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、すべて相続人鈴木一郎が取得する。
上記の協議の結果を証するため本書3通を作成し、各自署名、押印の上、
それぞれ1通を所持する。
令和1年1月20日
埼玉県○○市〜(住所)〜
相続人 鈴木 花子 実印
埼玉県○○市〜(住所)〜
相続人 鈴木 一郎 実印
東京都××区〜(住所)〜
相続人 鈴木 二郎 実印
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<遺産分割協議書作成の際のポイント>
・誰がどの財産を取得するのか明確にする
(不動産は登記簿どおりの表示を、口座や各種権利は名義を明記)
・協議書が数ページに渡る場合は、それぞれに割印を押す
・胎児や未成年者が相続人の場合は特に注意!
(胎児がいたら、胎児が生まれてから相続手続を開始したほうがよい)
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5 相続手続開始(遺言書がある場合)
上記の4では遺言書がない場合についてご説明いたしましたが、
ここでは遺言書がある場合の進め方について触れてみます。
まず、発見された遺言書が自筆証書遺言か秘密証書遺言だった場合、
すぐに開封してはいけません。裁判所に「検認手続」を申し立ててください。
検認手続の申立てには、故人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改正原戸籍と
相続人全員の戸籍、遺言書の控えなどの書類が必要になります。
申立ての後、1週間〜2週間程度で裁判所から連絡がありますので、
指定された日時に出向き、相続人の立会いの上でようやく遺言書が開封されます。
(相続人は全員が立ち会わなくても問題ありません。)
遺言書が公正証書遺言だった場合は、検認手続は不要です。
発見後、ただちに相続手続を開始できます。
いずれの遺言書でも、法的に有効な遺言書であれば、
これを使用して不動産や預貯金の相続手続を進めることができるようになります。
ただ、もし遺言書が「愛人A子に全財産を相続させる」といった内容の場合、
当然のごとく残された家族の中では大問題となることでしょう。
しかし、相続人には遺留分という権利が認められていますので、
配偶者や子がいるのに、全額を赤の他人に持っていかれるということはありません。
遺留分とは、相続人が最低限もらえる割合のことを言います。
慰留分の割合は、相続人が両親のみの場合は法定相続分の3分の1、
それ以外の場合は法定相続分の2分の1が遺留分となります。
(なお、兄弟には遺留分はありません。)
遺言書によって遺留分に満たない遺産しかもらえなくなった人は、
多くもらった人に「遺留分減殺請求」をすることによって、
自身の遺留分を取り戻すことができます。
遺留分減殺請求の方法は特に定められていませんが、
通常は内容証明郵便か、家庭裁判所に調停を申し立てて請求します。
請求の期限は、相続の開始及び遺留分の侵害を知ったときから1年以内です。
これを過ぎると時効によって請求できなくなってしまいますので、ご注意ください。
※2019.7.1施行(遺留分制度の見直し)
遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、
遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになります。
(従来は目的となる財産が共有状態になっていました。)
6 遺産の分配(遺言の執行・遺産分割)
遺言書があった、もしくは遺産分割協議書がまとまったという場合は、
実際に遺産を分配するための手続に入ります。
遺産のうち不動産は法務局で所有権の移転登記、預貯金は引き出しや解約、
自動車や各種権利は名義変更などの手続が必要になります。
それぞれ必要書類や提出先が異なりますので、1つ1つ確認しなければいけません。
これらの遺産相続の手続は非常に煩雑なものですので、
誰がこれを負担するかというのが大きな問題となります。
一般的には、相続人の1人が代表して手続を行うことが多いです。
両親の面倒を見る長男が大半の財産を相続する、といった場合などは
おそらくその長男が全員分の手続をすることになるでしょう。
そのほか、遺言書の中で遺言執行者を指定したり、
遺産分割協議書で手続を依頼する人を定めておくというケースもあります。
これらのケースでは、遺言書や遺産分割協議書の作成に携わった
弁護士や行政書士などの専門家に、そのまま相続手続も依頼することが多いようです。
このようにして、遺産の分配手続を終えましたら、相続手続もようやく一段落です。
あとは、相続税がかかりそうな場合は、相続税の申告をすれば手続は完了となります。
(相続税については8 相続税についてでご説明いたします。)
7 相続したくないときは…(相続放棄・限定承認)
これまで相続時の手続について見てきましたが、
明らかに相続財産より借金が多い場合などは、借金まで相続したくないですよね。
●相続放棄
こういった場合、相続放棄という選択肢があります。
相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったとみなされるので、
すべての財産・負債を相続することがなくなります。
プラスの財産だけ相続してマイナスの借金は相続しない、といった都合のいいことは
できませんので、マイナスのほうが多い場合によく利用されます。
相続放棄をするには、家庭裁判所に申し出て、受理されなければいけません。
よく遺産分割協議などの話合いの結果、「財産はいらないので相続を辞退する」などと
言う方もいますが、「相続しない」のと「相続放棄」はまったく違うので要注意です。
忘れた頃に借金の取立てなどが来ることもありえますので、
個人の負債が多いような場合は、きちんと裁判所を経て相続放棄しておくべきでしょう。
●限定承認
相続放棄のほかにも、限定承認という方法もあります。
限定承認とは、プラスの財産があればその範囲で借金を返済するが、
プラスの財産がなくなったら、残りの借金は返済しないというものです。
限定承認をするには、財産目録を作成して家庭裁判所に申し出る必要があります。
そして、限定承認は相続人全員の共同でなければすることができません。
(相続人のうち1人でも反対する人がいれば限定承認はできなくなります。)
ただし、相続放棄した人については初めから相続人でなかったものとみなされるので、
そのほかの全員の合意があれば、限定承認の手続をとれます。
限定承認をすると、裁判所から相続財産の管理人が選任されます。
以降は管理人がプラスの財産を売却して、借金の返済に充てていきます。
結果、財産が残れば相続人間で相続し、負債が残っても返済の義務はなくなります。
限定承認による清算手続には、通常1年以上の長い時間がかかりますので、
明らかに借金のほうが多い場合などは相続放棄をするほうが得策でしょう。
●相続放棄・限定承認の期限
相続放棄も限定承認も、相続開始前からすることはできず、
相続人が相続を知ったときから3か月以内(!)にのみすることができます。
「相続を知ったとき」とは通常は個人の死を知ったときのことを指しますが、
個人の子や親が全員相続放棄をしたため兄弟が相続人となったときなどは、
自分が相続人になったことを知ったときから3か月間となります。
この3か月という期間(熟慮期間と言います)はかなり短めですので、
相続するか放棄するか、できるだけ早く決めなければいけません。
もしこの期間に決められない事情があれば、家庭裁判所に申し立てることによって
熟慮期間を数ヶ月間延長してもらうこともできますが、
必ず認められるというわけではないので、やはり早めの決断が必要になるでしょう。
また、相続放棄や限定承認をしようという場合でも、
プラスの財産を勝手に使ってしまったり売ってしまったりしていた場合は、
その人は単純承認(プラスもマイナスもすべて相続するという通常の形)したと
みなされてしまい、相続放棄・限定承認はできなくなりますのでご注意ください。
8 相続税について
終わりに、相続に関する各種税務手続についてご紹介いたします。
●準確定申告
まず、相続税とは直接関係ありませんが、準確定申告についてご説明します。
準確定申告とは、確定申告をする予定だった人が年の途中で亡くなったとき、
その年の死亡日までの所得について確定申告をするという手続のことを指します。
事業を営んでいた場合など、故人が所得税の確定申告をしていた場合は、
その人が亡くなった後に準確定申告をしなければいけません。
通常はサラリーマンの方は不要ですが、給与が2,000万円を超えていたり
2箇所以上から給与を受けていたり、給与所得以外の所得が
20万円以上あった人などについては、準確定申告をする必要があります。
準確定申告の期間は、亡くなってから4ヶ月以内です。
通常は、相続人が故人に代わって申告・納税します。
相続人が2人以上いる場合は、各相続人の連署により申告書を提出します。
●相続税
次に、相続税についてご説明いたします。
よく日本では「相続が三代続くと、財産がなくなる」と言われており、
ニュースなどでも「莫大な相続税を支払うため、相続した土地で物納した」
といった例を耳にすることもあります。
しかし、実際は大半のケースでは、相続税は1円もかかりません。
これは、相続税には比較的高額の基礎控除が認められているためで、
相続財産がこの控除額より少なければ、相続税は課税されません。
(この場合、相続税の申告も不要になります)
基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×法定相続人) となっています。 ※平成27年改正
両親と子2人の標準的な家庭では、3,000万+(600万×3)で、
合計4,800万円というのが相続税の課税ラインとなりますね。
主な財産が通常の自宅と何百万円かの預貯金程度であれば、
おそらくその家庭では相続税がかかることはないでしょう。
相続財産が上記の控除額を超えるようなら、その分について相続税が課税されます。
相続税は、相続人が相続の開始があったことを知ったときから10か月以内に、
税務署に申告書を提出して、かつ税金を納付しなければいけません。
相続財産には、相続手続で得た財産に加えて、3年以内に故人から受けた贈与や、
故人の死によって得た保険金・退職金なども含まれるので注意してください。
個々の相続財産の価格の評価は、宅地ならば路線価、家屋なら固定資産税評価額
といったように、項目ごとに評価方法が決められています。
こうして計算した相続財産の合計金額から葬儀費用を差し引いた金額が
基礎控除額を上回っているようでしたら、相続税の申告・納税が必要となります。
●各種控除・特例制度
もし相続税がかかる場合でも、各種控除や特例を利用すれば
相続税を課税されないで済むこともあります。
まず、残された配偶者は税制上でとても優遇されています。
配偶者の相続割合が法定相続分以下だった場合や、
取得金額が1億6,000万円以下だった場合は、その配偶者には相続税は課税されません。
要するに、通常の法定相続分で相続する限りは配偶者には相続税がかからない
ということになります。
相続人が未成年者や障害者の場合についても、年齢や障害の程度に応じて
数十万〜数百万円が支払う税額から控除されます。
また、「小規模宅地等の評価減の特例」という制度もあります。
家族で住んでいた自宅や、商売をやっていた店舗しか財産がない場合、
それに対し多額の相続税がかかってしまうと、家や店舗を手放すしかなくなります。
それでは残された家族がかわいそうということで、一定の面積までの
自宅やお店・事業所に関しては、50〜80%の評価減をしてくれるという特例です。
これなら、自宅が1億円だったとしても、相続する人がそのまま住む場合は
80%の評価減となりますので、自宅は2,000万円として計算されます。
2,000万円ならば上記の基礎控除額以下ですので、相続税はまったくかかりませんね。
ただし、これらの控除や特例を利用するには、それぞれ申告が必要になります。
これらはあくまで相続税がかかる場合の控除・特例ですから、
通常の相続手続と同様、10か月以内に遺産分割を終わらせて、
相続税を申告することによって、これらが適用されることになります。
●相続時精算課税制度
そのほか、相続財産を生前に渡してしまう方法もあります。
これは「相続時精算課税制度」という新しい制度で、
通常の贈与ですと年間110万円以上は課税されますが、
この制度を使えば、2,500万円までは非課税で財産を贈与することができます。
利用できるのは、65歳以上の方が、20歳以上の子や孫に生前贈与する場合です(平成27年改正)。
利用したいときは、贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日の間に
贈与税の申告書と、この相続時精算課税制度を利用する届出書を提出します。
ただし、非課税と言ってもまったく税金がかからないわけではありません。
贈与された分は、相続財産に加算されて、相続のときにまとめて課税されるのです。
たとえば、生前に2,000万円贈与して、相続時に残っていた財産が8,000万円だったら、
合計して1億円が相続財産として計算されることになります。
贈与税の後払いとも言える制度ですが、相続財産全体が基礎控除額を
超えないような場合は、結果的に無税で生前から贈与できることになりますので、
選択肢の1つとして検討する価値はありそうです。
9 当事務所へのご依頼
当事務所では、遺産相続に関する諸手続のサポートを承っております。
「相続手続といっても、何から手をつけていいのかわからない」
「自分で手続を進めたいけど、とてもそんな時間はない」といった方、
お電話やメールでのお問合せは無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください!
サービス内容・料金(税込)
相続手続フルサポート(遺言執行者の場合)
着手金10万円+相続財産評価額の1%程度
相続手続フルサポート(遺産分割協議の場合)
着手金10万円+相続財産評価額の2%程度
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・相続に関する諸手続がすべてセットとなったフルサポートコースです。
・不動産の名義変更や預貯金の分配などの煩雑な相続手続を、
相続人に代わって迅速・確実に進めます。
必要に応じて、他の専門家(税理士・司法書士等)と提携して手続を進めますので、
お客様のほうで手続ごとに他の専門家を探すお手間がかかりません。
本サービスには以下の内容がすべて含まれています。
1 相続人の調査 (戸籍・除籍等をたどり、相続人の範囲を確定させます)
2 相続財産の調査(相続可能な財産を調査し、財産目録を作成いたします)
3 相続税の試算 (1・2の調査結果を元に、相続人別に相続税の試算をいたします)
4 遺産分割協議書(まずは分割案を作成し、お客様との打合せを重ねて完成となります)
5 遺産の分配 (遺言書や分割協議書に基づいて、相続手続を円滑に進めます)
6 その他の諸手続(各種名義変更などの諸手続も代行いたします)
※上記の各料金には、ご相談料や細かな雑費(通信費・封書代等)も含まれています。
面会でのご相談(通常1件5,000円)も何度いただいても無料ですので、納得いくまでご相談ください。
また、相続終了後もご不明な点がありましたら、お気軽に何度でもご相談ください。
※各種機関(役所・金融機関等)の手数料はお客様のご負担となります。
※深い調査や多くの日数を要する案件の場合、出張が必要な場合等は
別途料金をご請求する場合がございますが、その際は必ず事前にお見積り申し上げます。
※料金は、直接現金でお支払いいただくか、当事務所の口座への振込みにてお支払いください。
連絡先
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誠に恐れ入りますが、現在、ご依頼・お問合せの受付を停止しております。
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